https://www.yomiuri.co.jp/local/yamagata/feature/CO037411/20260930-GYTAT00062/  地元のお祭りに行くたびに、毎回屋台で買ってもらった。幼いながらに、お祭りのときにしか食べられない「特別感」も相まってその食べ物が大好きだった。  河北町役場を訪れたとき、すぐ目の前にある青果店「クラッカー」(河北町)に吸い寄せられた。店先で多くの人が写真を撮り、ほおばり、信じられないくらいにぎわっている。みんなの手にはかわいくデコレーションされたチョコバナナ。  地元の市場で仕入れた新鮮な果物がずらりと並ぶ中、注文したのはお店の一角で存在感を放つチョコバナナの「デコシャル」(税込み400円)。糖度が高く、もちもちとした食感のバナナをコーティングするところまではごく普通だ。そこにほかのお菓子やチョコレートをトッピングし、動物やキャラクターの顔が描かれた「デコレーションスペシャル」。見るだけで楽しくなってくる。  昭和初期から営業し、長年地元で愛される老舗店。店主の佐藤茂実さん(66)によると、チョコバナナを扱うきっかけになったのは東日本大震災で炊き出しに参加したことだった。2011年4月、宮城県石巻市の自衛隊の物資配給所へ、仕入れに使っていたトラックに300本のバナナを積んで向かった。  バケツにチョコレートを入れ、バナナを浸して次々と作った。チョコも固まりきらないまま渡すと、被災者からは「あのとき以来、新鮮な生ものは食べられていなかった。本当に『特別』なものをつくってもらってありがたい」と大好評だった。  その後、チョコバナナの販売を本格的に始め、地元のイベントへも出店するようになった。「祭りで子どもたちを喜ばせようとするうちにデコレーションを施すようになったんだよね」と佐藤さんは振り返る。  従業員でアイデアを出し合い、向かいにある町児童動物園の動物たちをモチーフにしたチョコバナナなど、レパートリーは100を超える。昨年、動物園に「オニオオハシ」が仲間に加わったときは、そのバナナのような大きなくちばしをモチーフにした新作を作った。営業時間中にも補充を続け、週末には500本ほどが売れるという。  「デコシャル」の販売を中心となって行うのは、息子の幸司さん(32)。早朝から仕入れに向かい、配達を終えて店頭に立ち、営業終了後に装飾の仕込みまで担う。それでも「『うまい』という表情をお客さんが見せてくれたときが一番うれしい」と笑顔を見せる幸司さん。  「子育てを頑張るお父さん、お母さんたちが子どもたちと一緒に『楽しい』と言ってくれる。普段の買い物でそんな時間を提供できる店であり続けたい」と語る茂実さん。  これからも訪れた人の日常に寄り添い、たくさんの人の「特別」な思い出になる店だ。(伊藤優太)  メモ 河北町谷地己56の17。営業時間は平日午前10時~午後6時(土日祝は午前9時から)。水曜定休(木曜も休みの場合あり)。店の新鮮な果物を使用したフルーツサンド(税込み680円)も楽しめる。0237・73・3842。店のインスタグラム(@s.shigemi)では、店のお買い得情報が掲載される。

こちらもどうぞ

電話をかける